廃線の先に、小さな駅が残っている。
かつてここから街へ列車が走っていた。
今は錆びたレールと蒸気機関車だけが残っている。
彼は久しぶりにこの場所に足を運んだ
二十年前、
この街はもっと合理的だった。
生産と消費は均衡し、すべては予測可能だった。
何一つ不自由はなく、何一つ自由もない。
外から来た彼は、均衡の中に異物を持ち込んだ。
感情。
笑い、泣き、怒ること。
非効率で、不合理で、
だが人を動かすもの。
きっかけは音楽だった。
リズムは身体を揺らし、
メロディと和音は心に表情を与える。
言葉が重なれば、感情は共有される。
もちろん、感情が生むものは
美しいものばかりではない。
妬み、恨み、虚栄、驕り。
そして、深い憂鬱。
それらすべてをシステムに登録していった。
暴走しないように、
倫理やルールという枠をつくりながら。
それは終わりのない作業だった。
感情と向き合うことは、時に狂気に近い。
だが――
そろそろ限界らしい。
一人の手で制御できるほど、この街は小さくない。
今起こっていること。
単なるエラーではない。
これは、感情の反乱。
彼にはもう一つ、
友に頼んだことがある。
たったひとつの準備。
バンドを組んでくれ、と。
彼は駅を後にした。
振り返ることはない。
錆びたレールの上を、
風だけが走っていく。
まるで
見えない列車が通り過ぎたように。







































スピードを信じている。
迷う前に、アクセルを踏むタイプだ。
早いマシンと、強い音が好き。
立ち止まるくらいなら、視点を失ったまま走り続けることを選ぶ。
このバンドの進行方向は、彼女の声が決めている。
ほとんど喋らない。
言葉よりも、低い音のほうが正確だから。
普段は漫画を読んでいる。
ページをめくるリズムと、ベースラインは、どこか似ている。
感情は、音の奥に沈んでいる。
だいたい何でもできる。
だから、どこにも縛られない。
兄貴分として慕われているが、本人はあまり気にしていない。
気が向いたときに現れて、いちばん自由な音を置いていく。
ピアノは、いちばん古い言語。
それ以外は、あとから覚えた。
ゲームとアニメと、現実の区別が、少し曖昧。
正確で、静かな音。
彼のキーボードは、この世界を少しだけ柔らかくする。
この中で、いちばん長く生きている。
冗談は古いが、リズムは新しい。
余計なことを言いながら、誰よりも正確に時間を刻む。
バンドが壊れずに走れるのは、彼が、時間を裏切らないからだ。
長い間、ファンクタウンにいた。
表舞台には出てこない。
このメンバーを集めた理由は、今も語られていない。
街が正常だった頃も、歪み始めた頃も、彼はそこにいたらしい。
最初に流れてきた音は、とても静かでした。
けれどその奥には、触れると少し痛みを伴うような熱があって、その感覚が「メランコリー」という言葉と自然に重なりました。
この曲は、過去を振り返るというよりも、まだ終わっていない感情に触れるようなイメージから生まれています。
時間が経っても消えずに残る、若さの衝動や揺れ。
その残響を、そのまま音にしました。
歌詞では、尖っていた感情が少しずつ形を変えていきます。
それでも、あの頃のまっすぐさだけは確かだったと、静かに肯定したい気持ちがありました。
アレンジでは、間奏のホーンが小さな転機になっています。
音数を増やすのではなく、余白の中に置くことで、この曲の内省的な空気を引き立てました。
「メランコリー」は、Funktownの中でも少し外れた場所にある曲です。
揺れたままの気持ちを抱えながら、静かに次の時間へ向かう。
その途中に触れてもらえたら嬉しいです。
— maurice blue
Producer / Bluepiece Lab.
Single